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データヘルス計画から見える特定健康診査の穴

データヘルス計画。

聞きなれない言葉かと思います。

ですが、この計画、全国どこの区市町村でも策定されています。

 

我らが千葉市の計画はこれです。

 

千葉市のデータヘルス計画

 

日本は国民皆保険制度をとっています。

国民はいずれかの医療保険に加入する義務があり、加入する医療保険は大きく分けて2つあります。

一つは社会保険で、これは法人に勤め給料をもらっている人とその家族(公務員なども含まれます)が加入しています。二つ目は国民健康保険です。それ以外に後期高齢者医療制度や生活保護制度などがありますが割愛します。

この国民健康保険は各区市町村が運用しています。

 

区市町村はこの国民健康保険事業の運用により被保険者が受診した特定健康診査のデータなどの膨大な情報を有しており、それをどのように活用していくかの方針を定期的に策定しています。それがこのデータヘルス計画です。

 

千葉市のものを見ていくと、千葉市は生活習慣病の予防により末期腎不全を未然に予防し透析導入を減らすことで医療費の増大を抑制したいと考えていることがわかります。

そういった行政の方針を汲み取って日々の診療につなげていくのも我々町医者の仕事かなと考えています。

 

 

ところで、この千葉市のデータヘルス計画を見ていると、千葉市の思惑とは別に由々しき問題が浮き彫りになっています。

その問題とは特定健康診査受診者の偏在です。

 

データによると、40歳から59歳の若年層の受診率が極端に低くなっています。(全体で30%台というのも問題ですが。。。)

気になったので、当院で実施した特定健康診査の受診者も調べて見ました。

すると、やはり、40歳から59歳は13%程度しかおらず、国民健康保険被保険者に占めるこの年齢層の割合である31%に比べるとはるかに低い数値でした。(下グラフ参照)

 

 

さらに気になったので、特定健康診査の受診者の特徴を調べて見たところ、生活習慣病薬の服用率が極端に高かったこともわかりました。下グラフは左が当院で特定健康診査を受診した者の高血圧症、糖尿病、脂質異常症治療薬服薬率、右が厚生労働省が公表している高血圧症、糖尿病、脂質異常症の治療率です。同じ指標ではないので直接的な比較はできませんが、一般論として病気の治療率よりも病気で薬を服用している者の率の方が低いのは自明です。にもかかわらず、当院受診者の服薬率の方が高くなっています。

 

 

 

高齢者が多く、生活習慣病薬の服用率が高い。

これの意味するところは、つまり

 

「すでに病気を患った高齢者が多く特定健康診査を受診している」傾向にある、

 

ということです。

 

特定健康診査は生活習慣病の予防を目標に実施されています。

なので当然より若年者の、そして未治療の人の受診を想定して実施されており、それにより生活習慣病が発症する前に生活習慣に介入して未然に予防しようとしているのです。

ですがこの健康診査、実際にはすでに治療を受けている人の定期検査に使われているかもしれないということがデータから読み取れます。

それを証拠に糖尿病の服薬率はあまり高くありません。糖尿病治療では頻回で定期的な血液検査が必要なので、すでに保険診療内で血液検査が実施されており、患者さんが特定健康診査を受診する必要性を感じていないのかもしれません。

 

病院に来ていない人は元気なんだから健診を受けなくても良いのではないの?という疑問もあるかと思います。

ところが、当院の特定健康診査受診者のメタボリックシンドローム該当者と厚生労働省が公表しているデータを比較すると、その間に差はないのです。つまり、受診した人の群がとりわけ肥満だったりするわけではない。つまり受診していない人にも同等に肥満の人がいることが予測されるのです。

 

 

 

特定健康診査が病気の人の定期検査に使用されているとすると、特定健康診査の目標である生活習慣病の早期発見、早期治療にはあまり用いられていないことになります。

被保険者が支払う保険料や国や県の補助金で賄われているこのサービスが、本来意図したことと異なる使い方をされているとすれば、それは由々しき事態です。そしてその状況を早急に把握し、事態の改善をさせなければならないと思います。ですが、実際には明確な対策はとっておらず、受診率の向上というあやふやな表現で問題提起をするのみです。

病気の人の定期検査に特定健康診査を使用するのは現時点ではルール上問題はありません。病状悪化を予防するという観点から実施されることもギリギリセーフかと思います。(それも医療保険で実施されるべきかとも思いますが)

問題なのは、特定健康診査の実施場所が私たちの医院と同じような内科クリニックが中心のため、もともと病気を意識しない若年の元気な人は、そもそも特定健康診査を受診しようという気になかなかならないことなのではないかと考えます。特に若年の国民健康保険加入者は個人事業主が中心です。会社員と異なり健診に対する情報提供も希薄です。

そういう人たちにいかに啓蒙を行い、受診率を上げ、生活習慣病を未然に防げるか。

今後特定健康診査はそのあたりが課題になるのではないかと考えています。

長嶋 理晴 | 医学 | 01:38 | comments(0) | - |
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